日本の漢方との違い


日本にはまだ真の中医学を学ぶ教育機関(大学の医学部)や学会がないということで、他の先進国に比べて遅れています。また、日本国内で使用できる生薬の種類は、国の輸入制限により、中国、香港、台湾、シンガポールに比べると10分の1くらいです。
本格的な漢方治療にご関心のある方で、これから治療をご検討されている方は、少し長くなりますがお読みいただければと思います。毎年行う東京での治療説明会(間質性肺炎の)でも時々触れる内容です。

まず、日本にはまだ真の中医学を学ぶ教育機関(大学の医学部)や学会がないということで、他の先進国に比べて遅れています。当然、中医師国家試験も中医師制度もありません。また、日本の国際中医師免許の取得は、医師の仕事をしながら塾や通信教育で中医薬の基本を勉強する内容です。現在ではインターネットで1年くらいで取得できる国際中医師免許(合格率99%)などが出回っています。日本国内では医療資格ではなく民間資格となっています。

近年、日本の書店にも中医学に関する書籍が並ぶようになりましたが、残念なことに「傷寒論(しょうかんろん)」を代表とする古文献が多く、一般西洋医にはたいへん分かりにくい文言になっています。また、中近代の日本語に翻訳されている文献やテキストは乏しく、特に日々進歩している中医学の新しい情報は不足しているどころか無いに等しいといっても過言ではありません。

現在、日本国内で漢方エキス剤を処方している医療機関は大半を超えましたが、処方する方が西洋医であることや、相談にのる方が西洋薬の薬剤師なので、処方思考や使用方法がどうしても西洋医薬的になり、中医理論に基づいての治療には程遠いというのが現状です。ましてや患者さま一人一人の体質や証の変化に合わせてお薬の処方を配合していく治療は難しく、誤った漢方薬の使い方による副作用などの問題も後を絶ちません。

余談ですが、時々、シンガポールに赴任されたばかりの駐在員の患者さまが、日本の病院で処方された漢方薬を持ってご相談に来られます。「このお薬を服用しても問題ないですか?」ということなのですが、処方内容以前に、同じ処方の漢方薬(濃縮エキス剤)が数ヶ月単位で処方されているのを目の当たりにしてたいへん驚きました。一番多かったのは2年間分(赴任期間)でスーツケースでお持ちになられました。その時はつい「全部飲んだら病気になりますよ!」と申し上げ、開いた口がふさがりませんでした。

世界中で中医学による漢方治療が注目されているため、漢方薬が不足気味で値段も高騰している昨今において、これでは、資源の無駄ばかりか新たに病人を作っているようなことになりかねません。

次に、日本国内で使用できる生薬の種類は、国の輸入制限により、中国、香港、台湾、シンガポールに比べると10分の1くらいですので、日本国内では自由処方でも限界があります。よって、たとえ経験豊富な優れた本場の中医師でも、その実力を充分に発揮することは至難の業でしょう。

以上のような背景も海外(シンガポール・台湾・香港・北京)に本格的な漢方治療を求める人が増えている理由のひとつだと考えています。